2009年4月11日土曜日

SI終焉という預言(2)

このままで行くとどうなる

多段の請負作業が少なくなっていくことは、すなわち孫請以下の請負を行う小規模SI
業者(いわゆるSESと呼ばれる業態)の業績を逼迫することに間違いはない。まず、
派遣事業者登録を行っていない企業は、多くのビジネス機会を失うだろう。そして、
その先の未来のシナリオを形成する要因はいくつかあると考えられる。
まず第一に景気動向。企業の発注量に大きな変化がない場合は、総需要が変わらない
ので、大規模SI企業による中小SI企業の吸収や従業員の大規模SIへの移動、SI
作業の工程や専門ごとの分業化などが起こりうる。一方、景気悪化が続く場合には
大規模SI企業の自製率が高まり、中小SI企業の淘汰が始まる。
次にオフショアの動向。提供国の単価あたりの品質が向上している間は企業の作業
切り出しがある程度等比的に増加する。これは単価あたりの品質が向上するほど
切り出す作業単位が大きくなり、一度の受託人員規模が増加することを意味する。
また、日本のような二次請防止策のない国は、より同レベルのスキルの人材を提供
しやすいので、この増加を助けることになるとも考えられる。その後オフショア活用が
なんらかの理由で飽和すると、国内での工程ごと、専業ごとの分業化に転ずるのでは、
と考えられる。
技術や制度の革新が今後のシナリオにどのように影響を与えるかを予測することは、
少々難しいかも知れない。
今までの制度革新を考えてみると、ISO9001は旧来の日立や富士通が行ってきた
ウォーターフォール型開発品質管理の延長にあり、制定によってSIのありかたを
大きく変えるものではなかったし、同様に、すでに人月単価による各月精算が企業と
SI業者の中で常態化していた大手エンドユーザにとっては(すなわち厚労省観点では
偽装派遣の温床になっていたような状態においては)工事進行基準会計導入などは、
双方が見かけ上月割りにするための方便となるだけかも知れない(余談だが、そもそも
ソフトウェアやサービスの部品化がこれだけ日々進む中、年や会計期をまたいで開発
進行が事前に計画・発注される予算執行におおらかなプロジェクトというのは政府系、
金融系をのぞいてどれだけあるのだろうか、という進行基準会計空論説もある
ようだ)。
技術革新について考えてみると、前回のとおり発注者側の課題は先進的なITほどその
価値を図る物差しがないことであった。機械投資による生産性向上のように入力への
変換精度を論ずるような左脳型向上は得意でも、出力が入力自身に直接変調をかける
ような右脳型向上が苦手な日本人が、かつての建築業然り、IT然り、わかりやすい
人月単価へと押し込んできたのは自明の理で、そこに立ち上がり期の右脳的な技術
革新は影響を与えないだろう。ただ、データベースがSaaS活用されることが普通
となった後には、大きなパラダイムシフトがおきるかも知れない。データベース
アドミニストレーターはよりコールセンターエンジニア側にシフトし、量的な淘汰が
行われる。加えて日本企業は企業内に重複したデータが存在することに寛大であった
ので、大手SI業者の多くは提案に相当量のDBを組み込み、そこからのDBソフトの
サポート費を収益源としてきた。現在下落傾向の強い人月単価の損益をDBソフト
サポート費で相殺する企業があるとすれば、その企業はパラダイムシフト後には新たな
収益源を求める必要があるだろう。
前回)(続く)

0 件のコメント:

コメントを投稿