2009年4月28日火曜日

アイコンビジネスにおけるexitの難しさ

病的かつオタクで、いけてない青年期を過ごした1969年生まれのブライアン・
ワーナー(またの名をマリリン・マンソン)は2000年のアルバム「HOLY
WOOD
」の中でロック・ヒーローのようなアイコニズムをGUN(銃)、GOD(神)、
GOVERNMENT(政治)とならんで狂信の中の殉死行為であると批判している
(いや厳密には批判ととらえるか、自己嘲笑と受け取るかは聞く側にゆだねていると
思うが)。

彼のように、自分がスターダムにいながら、一方で一歩冷めた位置にいることはとても
難しい。そのバランスを失い、あるものは自分で命を断ち、あるものは酒やドラッグに
自分の人生を預ける。先のアルバムの最終トラック、"Count To Six To
Die"の最後は劇録のようになっていて、室内で5回連続して拳銃のトリガーを
引いたあと、6発目のシリンダーがセットされたところでカットアウトする(一般的な
拳銃は6シリンダー)。つまりsomebody(有名人の意味)になろうとする
ことは多くて5シリンダー分の余裕がある自殺行為だ、とのエンディング。

アジアの芸能マーケットでいうところの「アイドル」はヒーローイズムではなく、
ジュブナイル期の憧憬のみで成立っているので、マリリン・マンソンの論点の中で
いうと、自身の成長を自覚し、自身も"Nobodies"の中の一員だと主張したところで、
"Born Again"の手前で止まることを強制される状況にある。ブリトニー
スピアーズの再登場と比較してみると、アジア人はアイドルにヒーローイズムを全く
望んでいないのが良く理解できる。

ジャニーズ事務所が草なぎ剛に謹慎中の飲酒を控えるよう言い渡し、他のタレント全員
にもはめをはずすことがないよう指示をしたと報道されている
一見するとポジティブな記事のように見えるが、事務所側、すわなちサービス供給者の
品質管理という点では、exit管理やサービス管理の甘さを露呈してしまっている
ように見える。本質からすると、どちらつかずだ。

まず、本当に草なぎさん個人のことを思いやるならばアルコール依存症に関する正しい
教育を本人、所属タレントに徹底するとともに、アンチ・アディクションを掲げ、業界の
中で先導役を果すべきだ。その意識で臨むなら、飲酒が謹慎内外の一行為でない
ことを理解できるはずだ。
マリリン・マンソンの意見を借りずとも、アイコン・ビジネスは「商材」が自己破滅する
可能性が高いことが世間によって理解されてており、アディクション予防は自身の
サービス保全にもつながると同時に社会的に同様の問題で苦しむ人へのシンボルとも
なるような前向きなフィードバックの形成が可能だ。
参考として、先のアルコール依存症のリンク先の内容は非常に良く整理されているので、
今回の特定個人の状況とは別の論点で重要なポイントを抜き出してみた。

習慣性飲酒となると同じ量の飲酒では同じように酔う事が出来なくなり、次第に飲酒量
が増えていく事になる(耐性の形成)。つまり、アルコール依存症になる事はこの
「習慣性飲酒」と深い関係がある。

アルコール依存症の形成を助長するものとして、アルコール依存症になる人の周囲
には、(中略)過度の飲酒で生じる社会的な数々の不始末(他人に迷惑をかける、
物品を壊す、等)に対して本人になり代わり謝罪したり、飲酒している本人の
尻ぬぐいをする家族など(イネーブラー(enabler)と呼ばれる)が存在する
ことが多い。イネーブラーは飲酒している当人の反省を必要とさせず、延々と過度に
飲酒することを可能にしてしまう

不治の疾患
アルコール依存症になったものが元の機会飲酒者に戻る事は殆ど不可能であると
されている。たとえ身体的に回復し、数年にわたる断酒を続けていた者であっても、
一口でも飲酒をすることによって再び元の強迫的飲酒状態に戻ってしまう可能性が
非常に高い。そして、進行性の病気であるためにさらに症状は悪化していく。
つまり、悪くなることはあっても、決して良くなることはない病気であり、寛解の
状態で再発つまり再飲酒をどう防ぐかが治療の重要な点となる。

死に至る疾患
適切な対処をしなければ、内臓疾患あるいは極度の精神ストレスなどによる自殺・
事故死など、何等かの形で死に至る。アルコール依存症者の予後10年の死亡率は
3~4割と非常に高く、節酒を試みた患者と通常に飲酒した患者とでは死亡率に差が
見られず、断酒することによってのみ生存率が高まる。

アルコール依存症の治療でまず大事なのが、「本人の認識」である。多くのケースでは、
アルコール依存症の患者は自分がアルコール依存症である事を認めたがらない。認めて
しまうと飲酒ができなくなってしまうからである。何よりもまず、本人に疾患の自覚と
治療の意思を持たせる事が大切であり、回復への第一歩となる。

一度アルコール依存症になってしまうと治療は難しく、根本的な治療法といえる
ものは現在のところ、断酒しかない。しかし本人の意志だけでは解決することが難しい
為、周囲の理解や協力が求められる。重度の場合は入院治療が必要な場合もある。
但しそれでも完治する事はない不治の疾患であり、断酒をして何年・十何年と長期間
経過した後でも、たった一口酒を飲んだだけでも早かれ遅かれ、また以前の状態に
逆戻りしてしまう。その為、治療によって回復した場合であっても、アルコール
依存症者が一生涯断酒を続ける事は大変な困難を要する。


逆に自身のジュブナイル性を認めるのであれば、事務所は宝塚歌劇団に見られるような
一定のexit制を早急に導入すべきであろう。一般的な人間は成長に伴い
ジュブナイル期の独善から抜け出し、複雑な利害関係を持つ社会の中で何を担って
いくのかを学ぶ。年齢を経ても"Born Again"を許さないのは人権的に少々
問題でもある。

2009年4月27日月曜日

集団意識の力と危機管理

JR西日本福知山線脱線事故の惨事から4年たった。JR西日本の過度な日勤管理
による運転士へのプレッシャーを直接原因とするとならば、ミスを発生させる温床と
なった余裕時分のないダイヤ管理のプレッシャーは皮肉にも鉄道利用者がかけたもの
でもある。誰も「JRも、とろとろせんと」と声を掛けること(発生地域は阪急電鉄との
激しい競合路線)が後日100名以上もの命を奪う大惨事の後押しをしているとは努々
思わず暮らしている。マクロで見ると、公共サービスのあり方は、目に見えない大きな
フィードバックループで形成され、一端にはかならず利用者が存在する。、見かけ
現状に不満があるとしても、それは以前の利用者の要望を一定量満たしている、と
言い切ると横暴だろうか。

リーマンショック以来、危機という言葉の意味が変わってしまったため、下火になった
が、一時期BCP(Business Continuity Planning:
事業継続性計画)が流行った時期があった。大まかにいえば、事業の中でクリティカル
パスとシングル・ポイント・オブ・フェイラーを見つけ出し、その対策を行うこと
により事業の継続性が保証されるようにすることである。その際、先のフィードバック
ループの論理の通り、利用者への対処如何により自身の事業の継続に影響を与える
要素もできるだけ施策選定に組み込まれることが望ましい。
だが、一般の「カイゼン」活動的感覚でBCPに取り組んでも、不買運動や過度の
期待、キーマンの失言、さらには生理的な悪感情によるサービス購買の停止などを
事前に察知し、予防していくことは非常に難しいのではないだろうか。例えば日本の
「ビジネスコンサルティング」と呼ばれる独特の改善手法は既知の組織とべき論に
基づいたハードウェア的発想を用いるので、暗黙知やマーケティング、購買者との
対峙の変化などソフトウェア的なものを取り扱うのは不得手だ。BCPにも似たような
性格があると見て取れる。

さて関連して、週末を賑わしたもう一つの「事件」から。
集団の賛同を得てスターダムにある特定のタレントの言動が本当に、数十億円以上の
経済損失を与え、公安のありかたや特定の政治家にプレッシャーを与えうるものならば、
広告システムや芸能のあり方も現代の危機管理を難しくする大きな要因なのでは、と
思う。

…と、とってつけたようなオチ、ご容赦のほど。

2009年4月26日日曜日

あれやこれや:今節のサッカーより

ブログ的には分けた方がいいのだろうけど、なにせ不精で(苦笑)。

10試合出場停止
第32節ののリーガは4月22日のミッドウィーク開催。2位のレアルマドリードは
ホームでヘタフェ戦。試合はよもやの展開で途中出場のグティの神がかり的なミドルで
86分に同点とした後、ロスタイムのイグアインのゴールによりかろうじて逆転勝利
した。終始アウェイのヘタフェに掻き回される中、「事件」は同点後の87分に発生
する。レアルマドリードのぺぺが、抜かれたエスケーロをペナルティエリア内で後ろ
から押し倒しただけでなく、倒れたエスケーロに2発のキックを見舞わせた。1度
エスケーロを気遣うが、当然のようにその後ヘタフェの選手に囲まれ、画面には
写らなかったが、その後密集の中でさらに1発あったとする報道もある。
その後の第34節のクラシコを前にして、カシージャスとカンナバーロの2人で
AS誌のインタビューにも答え、ディフェンス面の準備万端さを協調したレアル
マドリードだがそれはチーム内の動揺の裏返しだろう。
しかし10試合の停止って…。その後のインタビューで、本人は「今はサッカーを
やる気にならない」と答えたようだが、チームにすれば来期にまたがり9月くらいまで
試合に出れない選手をどのように扱うか、真剣に考えざるを得ないだろう。場合に
よってはユベントスに復帰の決まったカンナバーロの穴も含め、全く新しいコンビの
ストッパーで来シーズンを臨むことになりそうだ。

キレキレのイニエスタ
同節からバルセロナはアングリル(今シーズンから始まった連続した強豪チームとの
マッチング)に入り、セビージャとホームで戦った。自ら先制ゴールを決めた
イニエスタの大活躍により、4-0と戦前の好試合の予想を裏切る大勝で終えた。
イニエスタについては、下記の某携帯サイトへの書き込みが全てを物語っていると思う。
「イニエスタは万能ではない。全能ですね。」

Jリーグの今後をあり方見た
4月25日の磐田-京都戦(3-2で磐田が勝利)は、正直「流し」で見ようかと
思っていたが、両チームの非常に運動量の多いサッカーに目を奪われた。以前より
体型の点での日本のサッカーのスペイン化的な方向性についてここで書いているが、
特に前半はスペインサッカーのお株を奪うかの素早い展開でとても楽しめた。京都に
ついては精度の面で、磐田については素早く攻め込まれた際のディフェンスの対応
面で、かつ双方とも後半とのペース配分で課題を抱えているように見えるが、改善
できるポイントなので、今後も期待できそうだ。
にしても、スタート時のグダグタの状態から、イグノ加入後2連勝とした磐田に見る
ように、最近よく言われる韓国人ストライカーと日本のパスサッカーの相性の良さは
一理あると思う。チームのアジア人枠をもう1人増やすと、我々はさらに
スペクタクルなサッカーを楽しめるかも(いつまでたっても日本人ストライカーが育成
されない等、問題はあるだろうけど)。

「涙がでます」
第33節のバルセロナは一転してアウェイでバレンシアと2-2の引き分け。連勝記録
は7で終わった。バレンシアのホーム、メスタージャのハイビジョン放送はいつ見ても
神々しい。サンチャゴ・ベルナベウが「壁」、カンプ・ノウを「歓」とすると、
メスタージャは「光」だ。複雑な展開ゆえ、試合のMOMはと聞かれると即答は難しい
が、放送としてのMOMは解説の安永さん。ちょうどスペインから取材帰国直後という
ことで、レアルマドリードのファンデ・ラモス監督が次節のクラシコにどのように臨む
か、という話題から入った放送はバレンシアがどのようにバルセロナの攻撃を防ぐかに
焦点をあて、事実ウナイ・エメリ監督によって事前に計算された全員守備から
カウンター、という戦術通りに試合が進む(まぁ、2年前までのバレンシアであれば
「らしい」展開だ、というだけかも知れないが)。比較的バルセロナ寄りの進行が多い
WOWOWだが、この試合の放送は完全にバレンシアのホームだった。前半24分に
イニエスタとメッシのワンツーによって芸術的なゴールを決められると、「ここまで
頑張ってもダメか」感を伝え、その後43分にマドゥーロ、45分にパブロ・
フェルナンデスの連続ゴールで逆転した際に安永さんが繰り返し漏らした言葉がそれ。
こちらまで泣きそうになった。テレビでのサッカー解説に与えらる行間には、感情
むき出し形と、冷静解説形があると思うが、戦術を芸術として表現できるスペースが
与えられるというのはさすが専門性の高いWOWOWならではというところだろう。
ちなみに、試合後のエメリ監督は「満足しているが、できれば3点目に向けて後半
もポゼッションを高めたかった」とコメントしている。残念ながら(?)、アンリを
温存し、イニエスタを左WF(前節はメッシに替わり右WFで大活躍)に置いた戦術が
機能していなかった前半から、アンリを投入し、イニエスタを後ろに下げて通常布陣に
戻した後半にバルセロナが息を吹き返したとも見て取れる。今シーズンのバルセロナは
やはり圧倒的に強いのだ。
追加として、放送のハーフタイム中の特集は2004年当時のメッシ(16才)と
ボージャン(13才)。カンテラ(下部組織)で修行中の2人の対談はとても貴重な
ものになると思うので、再放送等お見逃しなく。

2009年4月21日火曜日

Oracle、$7.4BでSUNを買収

(記事はこちら
IBMとの交渉が決裂した後、SUNはOracleと合意したようだ。これだけ
の規模の買収だと独禁法の審査も厳しいものになると思うので、まだまだこの先
いろいろな展開があると思うが、まずは驚きです。

感想としては二つ。今まではJava陣営対Microsoft的な構図もあったけど、
今後はテクノロジーよりも企業規模での競合、協業が加速する予感がすること。
もう一つは国内では買収先の墓堀人的な傾向が強かったオラクルと、オープン
ソフトウェア系のビジネスばかりが目立っていたサンの間で果たしてシナジーが生まれ
うるのか、という点(極論をいえれば、オラクル&サンというと某ディストリビューター
の名前しか浮かばないし、ビジョンの部分でなにか新しいものを国内にもたらす
ことができる予感がしない)。
後者は日本のITのあり方や海外技術力との格差にも絡んでいるので、興味深く合併
の行く末を見守りたい。

2009年4月20日月曜日

先に流した涙ほど?:今節のサッカーより

ご承知の通り、浦和が若手とブラジル組の活躍で好調だ。特に17才の原口がFW
ポジションながら(登録はMF)センスの高いサッカーを披露していて、将来がとても
楽しみだ。前節の名古屋戦でチーム最年少ゴールを踏まえて2試合連続先発となった
今節も、少なくとも2回は決定機を作るなど、お膳立てというFW能力の半分の部分は
大部完成されている感すらある。今節の京都戦ではもう半分の部分、得点を取る作業
では結果をだせず、58分には高原と交代させられてしまったが、その後が今日の
話題。
前半のエジミウソンの得点で1-0とし、しかも試合の流れはその点差以上に優位
だった浦和だが、交代を告げられた原口はまるで、自分のゴールが決まらずにチームが
負けてしまったかのように、悔しさと自身へのふがいなさを顔いっぱいにためて
ベンチに下がっていった。フィンケ監督はとても彼を温かく迎え、それはベンチに
座ってからも、チームメートなどによって続いたが、テレビの画面は顔を覆い、下を
向いたままの原口を続けて映し出していた。
このシーンを見て、リーガエスパニョーラのある試合の1シーンを思い出した人も少なく
ないのではと思う。
昨シーズン、バルセロナの最年少ゴールを塗り替え(17才5ヶ月)、カップ戦を含め
35試合に出場し10ゴールを決めたボージャンは、今シーズンはフレブの加入や
イニエスタのWF起用もあって公式戦の先発としては全く使われない日々が続いた。
そんな彼がグアルディオラ監督の元、初先発となったのが2008年11月23日の
ヘタフェ戦。メッシの負傷でやっと得たチャンスも空回りか、センターへの切り込みを
狙ってはボールが繋がらず、を繰り返し結局55分には休養で先発をはずれていた
アンリと交代させられてしまう。本当にいいとことなしで終わってしまったボージャン
は顔を真っ赤にピッチをあとにし、ベンチで本当に涙を流した。
後にグアルディオラが、チームに対して「メッシのようにプレイをするな」と発言した
時、当時はメッシ批判ととられたが、最新のインタビューでは「メッシのような唯一の
存在を真似ようとしてもしょうがない」と言い換えている。今思えばこれらは
ボージャンのことを指していたのかも知れない。

良く、涙の数ほど…、という例えで、できるだけ早いうちに涙を流す思いをした方が
良いとされる。

ボージャンはその後のインタビューで「バルサの21人(22人?:リーガ
エスパニョーラではシーズン出場選手は事前登録制で25人からGK登録を抜いた人数。
自分の分を1名抜いているのかも)に入るだけでも名誉なことなんだ」と自身の控えの
立場を理解するコメントを残している。最年少ともてはやされ、翌年5~6番目のFWで
ある現実をつきつけられ、失敗し、涙を流し、それでも立ち直ろうとしている
ボージャン。そこからすると、原口の「涙」は少々早すぎやしないか。

今シーズンの浦和からすればACL出場もあるだろう。高原が復活し、ローテーション
のための第3フォワードが来ることだってあるのだ。その時に、自分のコンディション
とは別に出場機会が少なくなったとき、あせり、さらに努力し、成長し、という時に
耐性が無いようでは困る。17才の若者にそのような期待の掛け方は間違っているかも
知れないが、将来日本を代表する逸材への苦言として許してほしい。

2009年4月15日水曜日

初物には止まらない:今節のサッカーより

またもやレギュラーシーズン以外からになります。
AFC、CL、レギュラーシーズン共に大量得点が多かった今節だが、やはり
バルセロナ-バイエルン戦(バルセロナが4-0で勝利)を取り上げないわけには
いかないだろう。

試合の鍵となったのは、一言でいうとバイエルンのセンターバックの出来、特に左側の
若い(19才)ブラジル人プレーヤー、ブレノの動きだった。チェックをあせり、ある
時にはボールウォッチャーになり、その混乱がそのままバルセロナの得点シーンへと
つながっていったのだから、本人も試合後相当ショックを受けたのではないだろうか。

ただ、言うまでもなく、CLの8強チームの一角をそこまで貶めたのは、バルセロナの
異質なまでの連携力と個人技の高さであろう。
といっても、バルセロナがものすごく引き出しの多いチームかというとそういうわけ
ではなく、連動の速さがあまりにも異質なので、精神的に「ゾーン」に入った状態の
試合中の選手にとっては、経験上からくる本能的な対処ではもはや追いつかないもの
を見せ付けられる感覚なのだろう。そのあたりが、リーガでは決して毎試合4、5点を
取るわけではないことの理由かも知れない。つまり、ある程度冷静になれば予測と
対応も可能ということで、今回バイエルンになかったのはその部分だ。

ここで素人の目からも「定型化」している、と見えるバルセロナ右サイドの攻撃
パターンなどの分析を少々。

(1)メッシの鋭角にセンターへ切り込むドリブルとその後の個人技
「お前は本当に素人だ」という声が聞こえてきそうだが、実際メッシ自身が一時期
バルセロナが低迷している時期に、自分の個人技をもっと利用すべきと発言している
ことは、彼の「個人技」はチームプレイの立派な基点となっていることの表れだ。まず
ドリブルがうまい彼に対して、チームディフェンスが準備できていない状況でむやみに
タックルに行くのは愚の骨頂だ。もしその「愚」を試みるものには重心の低い
ドリブルで抜けてシュートを打たせるか、ファールを犯すかの究極の選択肢を選ばせる
ことになる。普通の相手は、その愚行を犯さないとわかっているメッシはサイドへの
上がりを待つための間を、自分が人よりも少し多く稼ぐことができるから前述のような
発言になるのであって、決して鼻高々なわけではない。
この時点でセンターにはエトー、左サイドにはアンリがあがっているので、メッシへの
チェックは左CBと左SBが行う、と考えてくれるとバルサは右SBのダニエウ・
アウベスのスペース占有がより簡単になる。そう、リーガ的な回答としてはメッシが
鋭角なドリブルを始めたら、ピボーテ(ボランチ)位置が下がって左CBと一緒に
チェックする、のほうが正しい。ただしそれとて、シャビ、グジョンセン、そして
イニエスタといった攻撃型ミッドフィルダーをチェックしながらではあるのだが…。

(2)ダニエウ・アウベスの戦術眼と精度の高いクロス
(1)の段階でセンター、逆サイドのエトー、アンリへと流れていくのと同じ割合で
WFへと豹変したダニエウ・アウベスが使える。ただクロスがうまいだけのSBには、
ポールに追いやって、クロスを打たせたほうがディフェンスの準備も間に合って良い、
と考える守備感がひょっとしてはやりかも知れない昨今、手前からどんどんミドルを
うってくるダニエウ・アウベスの存在はパワーゲーム的だ。だが、挑発にのって、左
CBが彼のチェックに戻ると…。

(3)怒涛のアタッキングサードと真のフォーワードの2人
ゲームによってはフォワードもつとめる攻撃ミッドフィルダー陣はまだ、ここまで参加
していないのだが、ここでアタッキングサードとして、翻弄されるディフェンダーの
間を狙いはじめる。だが、同様に2人のフォーワードもここまでだまっていたかと
いうと、そうではなく細かな裏への動きを左サイドで繰り返しているのだ。2対2
のところに、アタッキングサード1名加わるだけで数的優位が完成する。バルセロナの
本当に凄いところは、もぐらたたきの時間切れ間際のような全員が飛び出してしまう
ような間の悪るさがないことだ。まるで人の強烈シュートがはじかれたおこぼれを
狙うほうがよっぽどおいしい、とわかっているハイエナのごとく。。。


で、しかし、先の通りバルサが毎試合大勝しているかというと決してそうではない
ところがミソ。メンバーを落とすと連対率が落ちるとはいえ、リーガの中では研究
され、対処できているのも事実だ。だからバイエルンにもセカンドレグではぜひ意地を
見せてほしいと思うのだ。

2009年4月11日土曜日

SI終焉という預言(2)

このままで行くとどうなる

多段の請負作業が少なくなっていくことは、すなわち孫請以下の請負を行う小規模SI
業者(いわゆるSESと呼ばれる業態)の業績を逼迫することに間違いはない。まず、
派遣事業者登録を行っていない企業は、多くのビジネス機会を失うだろう。そして、
その先の未来のシナリオを形成する要因はいくつかあると考えられる。
まず第一に景気動向。企業の発注量に大きな変化がない場合は、総需要が変わらない
ので、大規模SI企業による中小SI企業の吸収や従業員の大規模SIへの移動、SI
作業の工程や専門ごとの分業化などが起こりうる。一方、景気悪化が続く場合には
大規模SI企業の自製率が高まり、中小SI企業の淘汰が始まる。
次にオフショアの動向。提供国の単価あたりの品質が向上している間は企業の作業
切り出しがある程度等比的に増加する。これは単価あたりの品質が向上するほど
切り出す作業単位が大きくなり、一度の受託人員規模が増加することを意味する。
また、日本のような二次請防止策のない国は、より同レベルのスキルの人材を提供
しやすいので、この増加を助けることになるとも考えられる。その後オフショア活用が
なんらかの理由で飽和すると、国内での工程ごと、専業ごとの分業化に転ずるのでは、
と考えられる。
技術や制度の革新が今後のシナリオにどのように影響を与えるかを予測することは、
少々難しいかも知れない。
今までの制度革新を考えてみると、ISO9001は旧来の日立や富士通が行ってきた
ウォーターフォール型開発品質管理の延長にあり、制定によってSIのありかたを
大きく変えるものではなかったし、同様に、すでに人月単価による各月精算が企業と
SI業者の中で常態化していた大手エンドユーザにとっては(すなわち厚労省観点では
偽装派遣の温床になっていたような状態においては)工事進行基準会計導入などは、
双方が見かけ上月割りにするための方便となるだけかも知れない(余談だが、そもそも
ソフトウェアやサービスの部品化がこれだけ日々進む中、年や会計期をまたいで開発
進行が事前に計画・発注される予算執行におおらかなプロジェクトというのは政府系、
金融系をのぞいてどれだけあるのだろうか、という進行基準会計空論説もある
ようだ)。
技術革新について考えてみると、前回のとおり発注者側の課題は先進的なITほどその
価値を図る物差しがないことであった。機械投資による生産性向上のように入力への
変換精度を論ずるような左脳型向上は得意でも、出力が入力自身に直接変調をかける
ような右脳型向上が苦手な日本人が、かつての建築業然り、IT然り、わかりやすい
人月単価へと押し込んできたのは自明の理で、そこに立ち上がり期の右脳的な技術
革新は影響を与えないだろう。ただ、データベースがSaaS活用されることが普通
となった後には、大きなパラダイムシフトがおきるかも知れない。データベース
アドミニストレーターはよりコールセンターエンジニア側にシフトし、量的な淘汰が
行われる。加えて日本企業は企業内に重複したデータが存在することに寛大であった
ので、大手SI業者の多くは提案に相当量のDBを組み込み、そこからのDBソフトの
サポート費を収益源としてきた。現在下落傾向の強い人月単価の損益をDBソフト
サポート費で相殺する企業があるとすれば、その企業はパラダイムシフト後には新たな
収益源を求める必要があるだろう。
前回)(続く)

2009年4月7日火曜日

下半身命!:今節のサッカーより

2週つづけて、厳密な意味で「今節」でないですがご容赦ください。

さて、3月28日のホームでのトルコ戦に続き、4月1日のアウェイでの同対戦にも
ロスタイムにて逆転ゴールで勝利したスペイン。これにて代表チームは11連勝、
31試合連続無敗となった。16世紀の大航海時代に準えた無敵艦隊という冠が以前は
少々重荷だったスペインも、その名に恥じない名実ともに世界一のチームとなったと
いえよう。

この連戦ではセスク・ファブレガスとイニエスタを怪我で欠いて臨んだ上、4月1日の
試合はビジャも外したスペイン。画面から精神力がもやもやと白煙立つような2008
EUROのミラクルを演じたそのまま、さらにチーム力での向上が見られるトルコの
素早いチェックに苦しみ、試合内容としては正直首をかしげた方も多かったのでは
ないでしょうか。それでも勝てたスペイン、どこまで勝ち進むのか、本当に楽しみ
です。

私なりの強さの分析を2つほど。
一つは、比較的独特な4-1-4-1のフォーメーションコンセプト(クワトロ・
フゴーネス)の継承。最近は露骨に攻撃型中盤が4人横にならぶ時間は少ないん
だけど、走力と体力とキック力に長けたアンカーとワントップの間で最大限の創造性を
委ねられて4人のミッドフィルダーが動き回るコンセプトは選手が入れ替わっても
ほとんどブレがない。まぁ、今回、リエラは「はまっていた」とはいえないから
言い過ぎかも知れないが、一度創造性が高いチームが完成すると、もともと型に
はまっていない分、引き出しが多くなり、それが試合の中で耐性につながっている
のかも。いや、もうちょっと整理が必要だな、この論点は。またいつか。

もう一つはスペイン選手の下半身の強さ。それも競り合いの中でのボールキープ、
といった類での比喩表現ではなくて、単純にバスケットボール、競輪やスケートの選手
かのように瞬発力と持久力を兼ね備えた太い下半身を持っている。同時期に北朝鮮
-韓国戦を見ただけに余計にそう感じるのかも知れないけど(テセは合格ですね)。
実は、国民の平均的な体型からするとスペインやメキシコあたりに日本代表躍進
への手がかりがあるかと以前から思っていたのだが、フェルナンド・トーレスや
セルヒオ・ラモスのあの大乃国のような体型(上下のバランスという点で)を
見るたびに根本的に育成段階で何かが違うことを思い知らされる。
一度、フィジカル担当の育成コーチをリーガでの指導経験者に頼んでみては
いかがでしょうか、協会殿。

2009年4月6日月曜日

子供であること、子供じみていること

人が閉塞的な状況に追い込まれている際に、追い込まれている要因や原因を知りながら、
その不利な状況や自身が被る不利益を転嫁したり、同様の境遇に相手を貶めようとする
行為のことを、現代用語では「逆切れ」などというわけだが、一般的にはまだ分別が
形成されていない子供に対しては使わない。多分その理由は少なくとも3つあって、
ひとつは、子供は自身の不利益の価値判断がきわめて直近の時間の中でなされることから、
その評価が大人の考える評価基準とは合わない場合があること、もうひとつは子供
自身が被った不利益の要因や原因への理解にいたらない場合があること、さらには
相手を貶めようとする行為が実際には相手に全く影響を与えない場合があることで、
これらは子供と大人を別けるここに掲げたような事前理解(恐らくはその総称が分別)
なるものが大人側に属することが前提である(だから、分別を持ち合わせていない大人
と子供の間では分別で片付かない衝突が発生する)。

こういった子供対大人という、恐らく動物として組み込まれた保護本能の中では理解
しやすい相関関係も、企業や国家を擬人化してよりよい関係の形成に我々は応用
できているかというと、なかなかそういうわけにもいかないようです。

北朝鮮が最終的に「衛星が周回軌道に入った」と報道している態度をどう扱うかは、
とても重要なことだと思う。確かに打ち上げ行為に対する国連決議違反の討議も必要
だが、問題は常に分別というものを境にして、都度都度の出来事が「子供の領分」
なのか、絵札がない中で一発逆転的な大貧民ゲーム(そう、まさにゲームロジックだ)
なのかが理解できない点だ。

70年近く前に、日本が取った蛮行とその悲惨な結末へ向かわせたものの背景には、
資源をめぐる世界的国家間競争の中での敗者復活戦的な要素があったことも事実だ。
乱暴な例えだけれども、1次リーグの際に、まだ地域リーグにいた日本は、自身の
子供性の内訳を見誤り2次リーグに名乗りで、また米国を始め連合国もファシズムが
もつ分別の錯覚を利用するかのような「子供じみた行為」の本質を事前に理解する
ことはできなかった。

現在のオバマ政権の対話政策は北朝鮮がまだ更正可能な「子供」としてみていることの
現れかと思う。日本と韓国は直接手を振り上げられている(すくなくとも拉致問題等
については)ので、「子供」なんだからという感情で平静を保つことはできないだろう。
だとすれば、「親」同士の対話として米中の処し方こそが鍵なのかも知れない。

2009年4月1日水曜日

Motely、Motelyを買収?

ある情報筋によると、ヘアメタルの生き残りとして活躍するアメリカのロックバンド、
Motley Crueが金融ポータルサイトの大手、Motley Foolへ買収を申し
出ているという。金融市場の悪化により、企業広告や購読者の低下に悩むMotley
Foolに関しては、事業戦略の変化に関していくつか噂があったが、メタルバンド
というのは始めて。
バンドのリーダーであり、スポークスマンであるNikki Sixxが「俺達のFxxkな
アティテュードを、そのまんまにしたような名前でクールだろ。ただ俺達の名前を
使わしてやったけど、しこたま稼いだ奴らとつるんで、そのままってわけにはなぁ。」
とコメントしたとも言われるが、詳細については不明。
なお、94年に設立されたMotely Foolの社名はかつてのダウジョーンズ
指標からの銘柄選定手法の一つであるFoolish Fourからきているとされるのが
定説であり、当時すでに落ち目であったヘアメタルバンドを社名に使いたいと思うとは
到底考えられない、という意見が大半である。

なお、以前Motley Crueが来日した際に、Nikkiが「おい、Tommy、おまえのように
ラップなんかにのめり込んでないで、俺様のように一生懸命ビジネスのことを
考えていると、日本の新聞会社すら手に入るんだぜ」と日経新聞を差し出した、
という噂は、ツアーマネージャの「eのつづりを見分けられない男が、どうして
日本語の新聞が読めるんだ」と肯定とも否定ともつかないコメントでうやむやに
されている。