2009年4月28日火曜日

アイコンビジネスにおけるexitの難しさ

病的かつオタクで、いけてない青年期を過ごした1969年生まれのブライアン・
ワーナー(またの名をマリリン・マンソン)は2000年のアルバム「HOLY
WOOD
」の中でロック・ヒーローのようなアイコニズムをGUN(銃)、GOD(神)、
GOVERNMENT(政治)とならんで狂信の中の殉死行為であると批判している
(いや厳密には批判ととらえるか、自己嘲笑と受け取るかは聞く側にゆだねていると
思うが)。

彼のように、自分がスターダムにいながら、一方で一歩冷めた位置にいることはとても
難しい。そのバランスを失い、あるものは自分で命を断ち、あるものは酒やドラッグに
自分の人生を預ける。先のアルバムの最終トラック、"Count To Six To
Die"の最後は劇録のようになっていて、室内で5回連続して拳銃のトリガーを
引いたあと、6発目のシリンダーがセットされたところでカットアウトする(一般的な
拳銃は6シリンダー)。つまりsomebody(有名人の意味)になろうとする
ことは多くて5シリンダー分の余裕がある自殺行為だ、とのエンディング。

アジアの芸能マーケットでいうところの「アイドル」はヒーローイズムではなく、
ジュブナイル期の憧憬のみで成立っているので、マリリン・マンソンの論点の中で
いうと、自身の成長を自覚し、自身も"Nobodies"の中の一員だと主張したところで、
"Born Again"の手前で止まることを強制される状況にある。ブリトニー
スピアーズの再登場と比較してみると、アジア人はアイドルにヒーローイズムを全く
望んでいないのが良く理解できる。

ジャニーズ事務所が草なぎ剛に謹慎中の飲酒を控えるよう言い渡し、他のタレント全員
にもはめをはずすことがないよう指示をしたと報道されている
一見するとポジティブな記事のように見えるが、事務所側、すわなちサービス供給者の
品質管理という点では、exit管理やサービス管理の甘さを露呈してしまっている
ように見える。本質からすると、どちらつかずだ。

まず、本当に草なぎさん個人のことを思いやるならばアルコール依存症に関する正しい
教育を本人、所属タレントに徹底するとともに、アンチ・アディクションを掲げ、業界の
中で先導役を果すべきだ。その意識で臨むなら、飲酒が謹慎内外の一行為でない
ことを理解できるはずだ。
マリリン・マンソンの意見を借りずとも、アイコン・ビジネスは「商材」が自己破滅する
可能性が高いことが世間によって理解されてており、アディクション予防は自身の
サービス保全にもつながると同時に社会的に同様の問題で苦しむ人へのシンボルとも
なるような前向きなフィードバックの形成が可能だ。
参考として、先のアルコール依存症のリンク先の内容は非常に良く整理されているので、
今回の特定個人の状況とは別の論点で重要なポイントを抜き出してみた。

習慣性飲酒となると同じ量の飲酒では同じように酔う事が出来なくなり、次第に飲酒量
が増えていく事になる(耐性の形成)。つまり、アルコール依存症になる事はこの
「習慣性飲酒」と深い関係がある。

アルコール依存症の形成を助長するものとして、アルコール依存症になる人の周囲
には、(中略)過度の飲酒で生じる社会的な数々の不始末(他人に迷惑をかける、
物品を壊す、等)に対して本人になり代わり謝罪したり、飲酒している本人の
尻ぬぐいをする家族など(イネーブラー(enabler)と呼ばれる)が存在する
ことが多い。イネーブラーは飲酒している当人の反省を必要とさせず、延々と過度に
飲酒することを可能にしてしまう

不治の疾患
アルコール依存症になったものが元の機会飲酒者に戻る事は殆ど不可能であると
されている。たとえ身体的に回復し、数年にわたる断酒を続けていた者であっても、
一口でも飲酒をすることによって再び元の強迫的飲酒状態に戻ってしまう可能性が
非常に高い。そして、進行性の病気であるためにさらに症状は悪化していく。
つまり、悪くなることはあっても、決して良くなることはない病気であり、寛解の
状態で再発つまり再飲酒をどう防ぐかが治療の重要な点となる。

死に至る疾患
適切な対処をしなければ、内臓疾患あるいは極度の精神ストレスなどによる自殺・
事故死など、何等かの形で死に至る。アルコール依存症者の予後10年の死亡率は
3~4割と非常に高く、節酒を試みた患者と通常に飲酒した患者とでは死亡率に差が
見られず、断酒することによってのみ生存率が高まる。

アルコール依存症の治療でまず大事なのが、「本人の認識」である。多くのケースでは、
アルコール依存症の患者は自分がアルコール依存症である事を認めたがらない。認めて
しまうと飲酒ができなくなってしまうからである。何よりもまず、本人に疾患の自覚と
治療の意思を持たせる事が大切であり、回復への第一歩となる。

一度アルコール依存症になってしまうと治療は難しく、根本的な治療法といえる
ものは現在のところ、断酒しかない。しかし本人の意志だけでは解決することが難しい
為、周囲の理解や協力が求められる。重度の場合は入院治療が必要な場合もある。
但しそれでも完治する事はない不治の疾患であり、断酒をして何年・十何年と長期間
経過した後でも、たった一口酒を飲んだだけでも早かれ遅かれ、また以前の状態に
逆戻りしてしまう。その為、治療によって回復した場合であっても、アルコール
依存症者が一生涯断酒を続ける事は大変な困難を要する。


逆に自身のジュブナイル性を認めるのであれば、事務所は宝塚歌劇団に見られるような
一定のexit制を早急に導入すべきであろう。一般的な人間は成長に伴い
ジュブナイル期の独善から抜け出し、複雑な利害関係を持つ社会の中で何を担って
いくのかを学ぶ。年齢を経ても"Born Again"を許さないのは人権的に少々
問題でもある。

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